キミじゃなきゃダメなんだ



「........」


拗ねたように目をそらしながら、先輩は帽子をとる。

まだとらないでくださいよー、と私が言う前に、ちょっと乱暴に私の頭に被せた。



「.....ホント可愛いよね、ムカつくくらい」

「え?」

「こっちの話」



え、私?

可愛いのは先輩だろう、どう考えても。


先輩の私に対する『可愛い』は、たぶん恋は盲目的なアレなんだと思うようになった。つまりはあまり本気に受け取っていない。


「可愛いのは先輩ですよ」

「だからそれ嬉しくないって」

「えー、褒めてるのに...」


伝わらないのは残念だ。

先輩は無自覚に可愛いのもいいけど、ちょっとその可愛さを自覚してあざとくなってみてほしい。軽率に。絶対それはそれで可愛いに違いない。


そんな風に先輩と遊びながら適当にお土産を決めて、私達は店を出た。



「今からどうする?」


携帯で時計を見ると、ちょうど三時を過ぎた頃だった。

早いなぁ、もう三時。

楽しい時間はあっという間に過ぎる。