そして、「...ちょっと、いい?」と言って、生徒席から離れたところを指差した。
「は...はい」
先輩についていって、校舎の陰になっているところで足を止める。
な、なんだろう。どうしたのかな。
てゆーか時間大丈夫かな。もう並ばなきゃいけないんじゃ.....
「あのさ、百合」
校舎の壁に背をもたれて、先輩が私を見下ろした。
「な、なんでしょうか....」
先輩の目がなぜか真剣で、ドキドキする。
グラウンドの方の喧騒が、遠くに聞こえた。
「...僕が、もし一位をとったら....」
...え。
目を見開く私に、先輩は微笑む。
そして、上目遣いに私の顔をのぞきこんだ。
その誘惑するような瞳にびっくりして固まると、彼はまるで確信犯のように、可愛らしく首をかしげた。
「僕のお願い、ひとつ聞いてくれる?」
...お、願い...?
まるで今にもキスできそうなくらい、距離が近い。
さっきからバクバクと心臓が激しく脈打っていて、「お願い...?」と震えた声が出た。



