キミじゃなきゃダメなんだ



「...んじゃ。こいつ、よろしくね」

「えっ、あ、はい」


返事をすると、松原先輩は早々に私たちから離れていった。


汐見先輩と再び目が合うと、「お疲れ」と目を細められる。


「い、いえ....何事もなく役目を果たせたので、よかったです」

「うん。カッコよかったよ」


クスクスと先輩が笑う。


う....走ってるとき、絶対顔やばかったよね。

美人の先輩を抜かしたときの顔とか、絶対悪人の顔してた。してやったりの顔だよ。女子じゃない。


てゆーか、このあと先輩のリレーなんだよね。

もうその顔色は戻ってて、ちょっと安心した。


するとそのとき、後ろの生徒席から女子の「あ!」という声が聞こえた。


「得点出てるよ!」

「ほんとだ!」

「うわ、紅団まであとちょっとじゃん!」

「最後のリレーで一位とれたら、イケるんじゃね?」

「あーそっか、得点高いんだっけ...!」


白団の生徒たちが、ざわざわと騒ぎ始める。


ちらりと先輩を見上げると、先輩もまっすぐ私を見ていた。