「...そう。ならいいんだけど」
すると、先輩はやっぱり笑う。
その顔はさっきより意地悪で、この人は無自覚な時とそうじゃない時があるのかと気づいて困った。
...うう。心臓に悪い。
いや、いいんだけどさ。
私が理由だとしても、先輩が体育祭で頑張ってるなら。
熱を持ち始めた頬に手の甲を当てて、なんとか冷やそうとしてみる。
でも先輩の顔を見たらどうしようもなくなって、一向に熱は引いてくれなかった。
...どうやってたっけ、私。
今まで、どんなふうに先輩と話してたっけ。
想われることに慣れてない私でも、先輩のこういう発言にはそろそろ慣れてきた。
でも、だからこそ、なんだか落ち着かなくなってくる。
今まではまるで非日常を体験してるみたいな感じで、この人と過ごしてたんだよね。
こんな人に想われてるなんて、これは夢じゃないかーって、何度も思ったし。
だけどさすがに今では、これはしっかりと現実なんだと実感がわいてきてて。
それはそれで、心臓に大きなダメージを与えてくる。
このひとは私のことが好きなんだっていう日常を、受けとめることになるんだから。



