「あのさ、」
「ん?」
2人で食後にもう一杯珈琲を飲んでいるとき、朔が口を開いた。
「お前の荷物、もしかしてあれだけ?」
そう言って指さすのは、昨日私が持ってきたキャリーバッグ。
「え、そうだけど?」
朔の質問の意図が分からなくて、とりあえず返事をした。
そしてその後に聞こえたのは、何故か朔の小さなため息。
「な、何よ…?」
警戒して聞けば、朔は呆れたように口を開いた。
「ちあ、お前な。ずっと住んでた家からどんだけ荷物厳選してきたんだ?あのキャリーかなり小さいし、本当に必要最低限しか持ってきてないだろ」
呆れた物言いだけど、それが見事に的中しているから驚きだ。