もし、今のが聞き違いでなければ
弦は私と結婚したいと思っているの?

私は、英斗に向って真剣に話をしている弦を見た。
弦の顔はとても真剣で、とてもその場しのぎとは思えなかった。
だが英斗の顔は怒りに満ちていて油断出来ない。
そして弦を睨みつけると視線を私に向けた。
「どういう事だよ千鶴!お前・・・お前こそ浮気してたんじゃないのか?」
自分の事を棚に上げてというのはこういうことかと本気で思った。
でも私は決して浮気した訳じゃない。
弦と再会したのだって英斗とさよならした後だ・・・
こんな言い方・・・・
冗談じゃない。

「浮気なんかしてないわよ。彼・・弦と再会したのは
 英斗のアパートに行っ帰りの新幹線のホームよ。
 あの時、英斗が浮気なんかしなければ、多分弦と会うことはなかった。
 でもね・・・私はこれでよかったと思ってる。」
「は?千鶴お前・・・」
「もし、アポありで英斗の部屋に行ってたらきっと・・こんなことには
ならなかった。でも・・・遅かれ早かれ・・・・いずれはこうなる運命だったのよ」
英斗は下唇を噛んでいた。
「お・・お前って・・・新幹線のホームでナンパされた男に
ホイホイついてって寝ちゃうような軽い女だったのかよ。
っていうか、相当たまってたのかよ。どんだけ尻が・・・」
英斗の言葉は私の平手打ちで最後まで言うことはなかった。