「さっきの江里子さんの言ってた事だけど・・・」
「うん」
「・・俺はできれば千鶴を早く『俺の嫁さん』にしたい」
「弦」
「だけど千鶴はドレス着たり、式を挙げたりしたいよね」
不安混じりの表情が緊張感を掻き立てた。
「・・・・」
私が何も言わない事で弦は何か踏ん切りをつけるように何度も頷いた。
「式は挙げたいよね。その気持ちは大事にしたい。ただ・・・このままだと江里子さんの
言う様に延ばし延ばしなりそうな気が・・・だからさ大変だろうが
もう一度仕切りなおして式場選んだりー」
「でも・・それっていつでも出来るよね」
勝手に言葉が口から出ていた。
「え?」
弦の言葉に根負けしたわけじゃない。
多分弦は何か言葉を繋げなくても私の中で答えは出ていた。
さっきはただ単にどうやって言葉にしようかと考えていただけ
式より先に欲しいものがあったから・・・
「水野・・・千鶴」
「え?」
「結婚したら私は水野千鶴になれるんだよね。そして弦は私の旦那様に
 なるんだよね」
「うん」
「ここの家の表札も水野になるんだよね」
「そうだよ」
「弦は私の事を『俺の奥さんです』ってみんなに紹介出来るんだよね」
「うん」
私は水野千鶴ですって・・・言いたかった。
「私・・・弦の奥さんになりたい。そりゃ~ドレスは着てみたいよ。
でもそれよりも弦と一緒になることの方が大事かなって」
「千鶴・・」
「ダメ?」
弦は私を力いっぱい抱きしめた。
「ダメな訳ないだろ?俺言ったよね・・・
ずっと俺の隣にいてほしいって・・・」

「うん」