真面目に言っているのになぜか頭にげんこつが落ちた。
「いったー!なんでゲンコツなのよ!!」
「バカか!お前は・・なにが京都の彼女たちだ。
 自慢じゃないが俺はそんな遊び人じゃねぇーよ。」
「だっていろいろって言ったらそれしかないじゃん!」
「ばーか」
久しぶりに会ったのに・・・
英斗ときっちりさっぱり別れて
やっと弦の胸に思いっきり飛びこめると思ったのに
なんでこんな言い合いしなきゃなんないのよ。
何だか悔しくなってきて
私は無意識のうちに立ち上がって鍵を弦に投げつけた
「やっぱり美鈴んとこ行く!帰るときは鍵かけてポストにでも入れて置いて!」
近くにあったバッグの紐を勢いよく掴むとドカドカと歩きながら
玄関へと向かっていた。
だがそのバッグの反対側の紐をグイっと・・・絶体に離さまいと弦が掴んだ
「はなしてよ!」
「落ちつけよ!」
「落ち着いてるわよ!」
「どこが・・・」
知らないうちにな涙が零れていた。
悔しいのと、虚しいのと・・・寂しさが入り混じって
顔は険しいながらも大粒の涙が輪郭をなぞるように流れた。
だがそんな私の頬を伝う涙を弦の指が堰き止める。
「こんな涙流して何が落ち着いてる・・だよ。ばーか」
「ばかじゃ・・ないもん。ただ・・・弦の・・弦の
ちゃんとした彼女でいたいだけだもん。」
涙目で弦を見つめると弦が私を引きよせ抱き締めた。
「ばーか。お前は俺のかわいい彼女だよ。」
私は顔をうずめながら首を横に振った。
頭上で弦の溜息が聞こえる。
「あーあ。俺の可愛い千鶴さんはこんなに聞き分けのない
女だったっけ?」
「・・・・・」
しばらく沈黙が続いたが・・・弦が大きく息を吐いた。