『好きだよ』

もしそう伝えていたとしたら、私達の関係は変わっていたのかな?

あの頃の自分は弱虫で、いじけてばかりだった。

もしあの頃に戻れるなら…

ははっ…

馬鹿みたい。戻れる訳なんてないのにね?

静かな家。

一人暮らしはもっとウキウキなもんだと思ってた昔の私。

でも現実は全然違った。

1人が怖い。

1人でいると…

あぁ。だめだな。私。

まだ過去として塗り替えられていない気持ちを無理やりかき消した。

「はぁ…」

溜息をポツリと吐き、会社の支度をする。

因みにご紹介が遅れましたが、私は菅野 美穂(かんのみほ)

今年で21になる。

とはいってもまだまだ半人前で、上司からはよく怒られてしまう。

メイクを仕上げて、慣れたピンヒールを履く。

「いってきます」

そうポツリといい、部屋を出た。

外の風はそろそろ春の変わりめになってきて、心地よい風だ。

こんな季節はいつも昔を思い出してしまう。