「佐和さん、こっちとこっち、どっちがいいと思います?」
「・・・」
黒の革のライダースジャケットにラフなTシャツにジーンズ、結んでない髪はゆるっとパーマがかかってる。
どこのモデルさんですか。
「佐和さん。」
「え、あ、」
ついオフスタイルの彼に見とれてしまった。
「佐和さん、退屈ですか?」
「ううん。ちょっと夕御飯のこと考えて…」
「今夜のメニューですか?」
「うん。あ、隼斗くん、何か食べたいものある?」
「佐和さんの手料理なら何でも。」
うう…こういうのって、ポロっと自然と出るものなの?
「隼斗くんって、いい旦那さんになるよ…。」
うん。何て言うか、奥さんをさらっと喜ばせる感じ…
ポロっと言った私の言葉に、彼は照れたようにそっぽを向いてしまった。
クールな雰囲気の彼が耳を赤くして照れてる姿は、可愛かった。
「あ、そうだ。」
吸水性抜群そうなフェイスタオルを手に取っていた彼に私は思い付いてある提案をした。
「今日、あの人残業で遅いらしいから、せっかくだし外食して帰ろう?」
「でも、俺家でも…」
「私もたまには主婦お休み!ねっ?」
「俺は全然いいですけど…」
「じゃあ、決まりね。何食べよう~…」
というわけで、2人で外食して帰ることになった。
そう。夫は残業だし。
どっかのホテルで高級ディナーでしょ……
ーーーーーー私のこの提案で、あんな事が起きちゃうなんて思ってもみなかった。
でも、それは私にとって大事な出来事だったんだ。



