雨足が強くなってきた。
それでも立ち止まった私…
そんなに遠くない距離に見慣れた人物を発見してしまった。
その人は突然の雨に、一緒にいた女性の折り畳み傘に身を寄せて入ると、親密そうな雰囲気でホテル街へと足早に歩きだした。
その後ろ姿を、ザーザー降りになった雨に打たれて見つめる私。
雨の音で何も聞こえない。
「佐和さんっ!?佐和さ………え、あれ……」
雨の音に混じって、微かに聞こえた隼斗くんの声。
きっと彼も気づいたんだ。
そして、私がそれを見ていたことも。
「佐和さん、帰ろう。」
それから家に帰るまで、あまり記憶にない。
微かに覚えているのは、私に被せてくれたジャケット越しに感じた私を支える強い腕の感触だけ。



