「はいローン!リーチ一通ドラが二丁でマンガ~ン」


「ありゃあ…また俊介の一人負け?お前ほんっと弱いなー」



「うるへー。酔ってなかったらお前らなんぞあいてにならんわあー」


そうのたまって名倉俊介(なぐらしゅんすけ)は麻雀牌で溢れかえっている机に突っ伏した。


「あぁあぁもうこりゃ続けられる状態じゃねーな。お開きにすっか」


対面に座っていた館山登が、牌の山の上に陣取った俊介のイソギンチャク頭をこてん、と転がす。真っ赤なイソギンチャクはいとも簡単に住み処を明け渡した。


「しっかしこんだけ負けといて何も無しってのはなんかなあ」


「あー?お金はもってないですよお?」


「お前から金取ろうなんて誰も思っとらんわ。まあここは後腐れなく罰ゲームってことで。今のトップは俺だから俺が決めちゃっていいよな?」


この部屋の持ち主である坂本明(さかもとあきら)が小考する。にやりと笑う。


「…よし!俊介、耳貸せ」


「…で、…して、それから…」


「あー、いいよいいよそんくらい全然へーき」


―この罰ゲームが全ての始まり。俊介にとって、醒めることのない悪夢の始まりだった。