「いやほんとに勘弁してお願い怖いんだって死ぬかもしれないからいやほんとに」

『お前さっきから何回言ってんのそれ!?つーかいい加減家くらい出ろよ!いつまで玄関でそうしてんの!?お前のせいで俺まで遅刻すんじゃねぇか!大事な初日に変な注目浴びたくねぇよ!』

「だったらお前一人で行けばいいだろ!俺を道連れにするな!俺は出ない!絶対家から出ないぞ!」

『まーた引きこもりか!お前は一体なんで高校受験したんだよ!いい加減腹括れ、男だろ!』


そんな終わりの見えない攻防戦に、俺たちは朝から躍起になっていた。

俺は白子颯(しらすそう)。
今日からピチピチの高校一年生。
今玄関で必死に俺を引きずり出そうとしてるコイツは、親友の橘遥(たちばなはるか)。
同じく今日から高校生。
チャラついた複数のピアスと眩しい金髪が印象的。

俺とコイツがこんな醜い争いをしているのには、深い…それはそれは深い理由がある。


「大体、あんな大勢の人がいる所で入学式なんて絶対無理だ!卒倒する!吐く!おろろろってなる!」

『逆に聞くけど大人数じゃない入学式って何!?お前そんな事言ってたらこの先なーんも出来ねぇぞ!そもそも学校っつーのは集団で学ぶ場所だ、当然だろ!諦めて外に出ろ!取り敢えず出ろ!』

「分かってる!分かってはいるんだ!でも、だってあそこには!あそこには!

………大勢の女が!!!」


そう、女。

何を隠そう、実は…俺は女が大の苦手。
ただその辺の「俺女とか苦手なんだよねー」とほざいてるモテない負け組の遠吠えとは同じにしないで欲しい。

俺は極度の女性恐怖症だ。

心の拒否も勿論だけど体も全面拒否する。
例を上げるとすれば、体中の蕁麻疹、吐き気、鳥肌、高熱、腹痛、頭痛、などなど。
それはそれは苦しめられてきた。

でも、昨日の夜にはちゃんと腹を括った。
ご飯もちゃんと食べたしよく眠ったし。
心も体も今日の為に備えていた。

だけど、直前になるとやっぱりダメだ。
このまま家のトイレに引き籠りたい。
どうかお願いします。