「こんにちは、水原さん。担任の吉田です。」
吉田先生。美人っていうより、かわいい感じの女教師。しっかりしてそうだし、明るいし、いい先生だな。私は、吉田先生のこと、好きだったのかなあ・・・。
「水原さんは、目立つタイプではなかったけれど信頼されていたのよ。友達もたくさんいるし。だから、記憶があろうとなかろうと、関係無いわ。大丈夫よ」
友達いたんだ。ちょっと安心。
先生の後ろをついていく。
「ここよ、水原さん。3ーB」
四階の一番奥か。
ガラッ
「みんな!おはよう」
「おはようございます!」
少ない・・・たった10人くらいしかいない。
「みなさんにはもう話しましたね。『あの事故』で詩奈さんは記憶を失いました」
ざわっ 
なんかみんながこっちをみてて・・・嫌だな。仕方ないか。
「皆さんのことも、覚えていません。
だから、色々教えてあげてね。生活はちゃんとできるわ。ただし!」
ビクッ おっきい声!
「無理矢理記憶を思い出させるようなことはしない!分かった?」
「・・・はい」
「水原さんの席は、窓際の三列目よ」
「は、はいっ」
「それでは授業を始めます!教科書の
~」
先生の声なんか、聞こえなかった。教室に来たら、何か思い出すと思ったんだけどなあ・・・。それにしても・・・本当に少ない。横に全部で四つ机があって、私は縦の三列目。でも、後ろには人がいない。でも・・・机がある。休み?にしては空席が多すぎる。今いる人達より多いよ・・・。なんか、静かで気持ち悪い。
授業ノート、とれなかったなあ。どうしよう。
「よかったら、貸そうか?リサのノート」
「え・・・?」
声をかけてくれたのは、かなり美人で髪を横にひとつにまとめてて背が高い、大きい目が印象的な子。
「あ、ありがとう」
「いえいえ♪私は相川リサ!リサって呼んで。・・・リサ、詩奈と親友だったの。覚えてない、よね」
リサさんは、きつそうな感じがしたけど、とっても悲しそうで。
「ご、ごめんなさい。覚えてないの」
「詩奈は悪くないよ!それより、リサのこともリサって呼び捨てしてよ!前もそうだったんだし」
「うん。リサ」
「次移動だよお!リサと行こう!」
くすっ
リサって、気が強そうなのに無邪気でおもしろいな・・・
「あ、あの!ウチも一緒にいっていい?」
「えっと・・・誰、かな」
「三崎真子だよ!真子って呼んで」
「真子、ね。もちろん!三人で行こう」
良かった・・・上手くやっていけそう。
「でも、やっぱり教室静かだよね!なぎさと流星がいたときは、にぎやかだったのにっ!」
前に並んでいた子達の会話が聞こえる。
ズキッ 頭が痛い・・・
なぎさ・・・流星・・・?
ドサッ
「詩奈!?」