「俺も実は捨て子でさ、今の親も本当の親じゃないんだ」
「へ?」
「でも孤児院は楽しかった!友達がたくさんいてさ、けど、今の家は最悪。」
星也さんの顔が暗くなっていく。
「今の母親から性的虐待受けてて、マジ最悪だよ」最悪という言葉と裏腹に星也さんは笑った。
「あ・・・・」
きっとこの人は強がりなんだ。笑顔でごまかしてる。
私は、この人を見てそう思った。
なんて悲しい人なんだろうな・・・・
「なんで、美晴ちゃんが泣くの?」
「へ?」
私の目から大粒の涙が溢れ出していた。
周りのお客さんが、「別れ話かしら」
「彼女の方重いわね」
と明らかに勘違い発言が聞こえはじめていた。
ヤバイ?!泣き止まないと、星也さんに迷惑が!?私が泣き始めたばっかりに!?

ヤバイと星也さんも思ったのか、明らかに動揺している。

「うわあ、彼女目腫れてるよ!」
「浮気かしら」
違う。私が泣いたのは自分と彼が重なったからだ。
強がって笑ってごまかそうとする癖があまりにもそっくりすぎて・・・
「彼氏マジ最悪」
「いや、無いわ」
ついに隣の中学生らしきカップルまでいい始める。店内のお客さんのほとんどが注目している。
どうしよう!?
「ゴメン、美晴」
「へ?」
目の前の彼はそういうと、頭をそっと撫でた。
「美晴、俺が悪かったゴメンね?」
星也さんがウインクをする。
(なるほど・・・)
つまり、カップルのふりで上手くごまかそうという作戦らしい。