「だから…安心して下さい、レナ姫。誰がなんと言おうと、俺は一度受けた依頼は最後までやり通しますんで。…俺は…消えませんから」
こんなに都合のいいことが、あるわけがない。
だって、今日初めて会った奴のに。
あんなに口が悪い奴なのに。
…それなのに。
熱いものが頬をつたう。
…涙?
「…あれ…?」
なんであたし、泣いているんだろ…。
こんな会ったばかりの人の前で。
「な、何でもないの!!ただ…これは…」
ギュッ…
…??
目の前が真っ暗になった。
あたし…抱きしめられてる?
「そうやって、素直に泣けばいいのに。…護衛の仕事ではありませんが、泣き場所くらいはつくりますよ」
ずっと止めていたものが、溢れだして止まらない。
「…ウウッ…ヒック…」
泣いたのはいつ以来だろう?
この理不尽な世界で生きることに慣れすぎていて、本来のすがたを見失ってしまったのはいつからだろう?
あたしが泣いている間、この人はずっと抱きしめてくれていた。


