溺愛☆ナイト様


「だから…安心して下さい、レナ姫。誰がなんと言おうと、俺は一度受けた依頼は最後までやり通しますんで。…俺は…消えませんから」


こんなに都合のいいことが、あるわけがない。

だって、今日初めて会った奴のに。

あんなに口が悪い奴なのに。

…それなのに。


熱いものが頬をつたう。


…涙?


「…あれ…?」



なんであたし、泣いているんだろ…。

こんな会ったばかりの人の前で。

「な、何でもないの!!ただ…これは…」




ギュッ…


…??

目の前が真っ暗になった。

あたし…抱きしめられてる?


「そうやって、素直に泣けばいいのに。…護衛の仕事ではありませんが、泣き場所くらいはつくりますよ」


ずっと止めていたものが、溢れだして止まらない。


「…ウウッ…ヒック…」


泣いたのはいつ以来だろう?

この理不尽な世界で生きることに慣れすぎていて、本来のすがたを見失ってしまったのはいつからだろう?

あたしが泣いている間、この人はずっと抱きしめてくれていた。