聞こえなくても

「…。」
 
 木漏れ日が教室に降り注ぐ

 学校を囲むようにして生える木々は風に揺れる
 
 今日も何も変わらない一日が始まった

 木々の揺れる音も

 私をあざ笑う声も

 なにも聞こえないこの世界では、私は深く考えることを放棄することができる世界

 
 彼女たちは何が楽しくて笑っているのだろう?

 今日も笑われるまま私はなにもできないのだろうか?

 自問自答を繰り返す。繰り返す。繰り返す。

 
 無論、答えは出ない


 以前、私に恋をしろと言う友達がいた

「…なーにしてんの!」

 私に肩を叩いて伝えてくる子

 美歩。鈴夜美歩だ。

 相当の変わり者で。物好きな彼女は、私によく話しかけてくれる

 彼女が、恋をしろ。そういった張本人

「あ、聞こえないんだっけ」

 なにか思いついたように手を打ってシャーペンで私の宿題の紙に書く

        ≪どーしたん?≫

 そんなことを書きつつ、楽しそうに私の顔を覗いこむ

 私は淡々とした表情で、美歩になんでもないとそぶりで伝える

「えー!どーせ愛しの人の事でも考えてたんじゃなーいの!」

 陰と陽。とはまさにこのことで

 美歩はとっても明るい子だ。身振り手振りだけで伝わってくる

 別に私は暗いわけではないけど、話さないからどーにも暗い印象

 …というか思考回路ごと暗いかもしれない

 彼女は恋愛の話が大好き。甘いものが大好きと

 とっても女子らしい子で

 現在、片思い中だ