「それで?浮気することになったの?」

「う、うん。」


はぁ、とため息を漏らし、呆れた様子でチューハイをグビッと煽るのは高校時代からの友人、
高山香織。

彼女のさばさばとした男らしい性格と、綺麗なルックスとのギャップは今でもなれない。


「契約浮気ねぇ……。」


ぼそっと囁く香織。
自分のことじゃないのに、
そうやって真剣に悩んでくれる香織。


……谷崎との浮気契約が成立したあと、
谷崎は何事もなかったかのように仕事に戻り、
私もその後、残っていた事務仕事をこなし、
仕事終わりに香織からのお誘いの電話を受けて
久しぶりに飲みに行くことにした。

化粧品会社で働く香織は会うたびに綺麗に
なってる気がする。


……香織くらいの美人なら、浮気なんてされないんだろうな。


「……落ち込んでる暇なんてないでしょ。」


「え、」


「悔しいなら、見返さなきゃ。
そのために噂の“フェロモン教師”と
浮気するって決めたんでしょ?」



力強くそう言った香織につられ、
私も力強く頷いた。


そうだ。
大好きな聖司を見返すために、
大嫌いな谷崎と契約したんだ。



「だったらとことん、やりなさい!」



香織にその言葉に、私はまた力強く頷いた。