「合コンに来てた他の女は男に受けるような話をするか、男の聞き役になって相槌を打つかのどっちかだったのに、お前はずっと教師になったらなにをしたいのか、そんなことばかり話してた。」
「えっ……そうだったっけ?」
何を話したのか、全く覚えてない。ただ、同じように教師を目指していたひとが居たことくらいは覚えてる。そう言うと、谷崎は見たこともないくらい優しくふわっと微笑んだ。
……そんな顔して笑うなんて本当ずるい。いつもは胡散臭い笑顔浮かべてるくせに!
睨む私の視線をするりとかわして、谷崎はまたいつもの薄っぺらい笑顔に戻った。
「やりたいことも見つからずに、教員免許を取っただけでやりきったと感じてたあのときの俺には楽しそうに夢を語るお前は羨ましかったし、むかついた。
それからずっと残ってたんだ。
ただ夢を語って、それだけで幸せそうに笑うお前の笑顔が焼き付いて離れなかった。」
「たに……ざき……」
谷崎はそれだけ言うと、私の手を引いて、私を腕のなかに閉じ込めて、扉を閉めた。
「……さっきのキスはなんだったんだって聞いてたな。教えてやるよ。」
「え……っ」
どういうこと?と言葉を紡ぐ前に、今日されたのよりもっと深く、唇が谷崎の唇で塞がれた。


