「なに帰ろうとしてんだよ。」 うわ、不機嫌そう。 眉間のシワ、そんな深いの初めて見た。 いつにも増して低い谷崎の声に少し萎縮しながらも、谷崎の方を見ることなく淡々と答える。 「……林檎。 途中だけど少し剥いてあるから、あとはあの人に剥いてもらって食べて。」 「いいから俺の話を聞け!」 「……っ、お大事に!」 不機嫌そうに腕を組み、声をあげた谷崎を振り切って、家を出た。 追いかけられるかと思って、少し走ってみたけど、何度振り返っても、そこに谷崎はいなかった。