「……終わった。」
「おー、お疲れ。」
お疲れってなに、お疲れって!
だいたいあんたが日頃から気を付けていればこんなに散らからないでしょ!
眠そうにソファーに寝転ぶ谷崎に反論しようとしても、一時間ちかく掃除をして疲れた私の体は思うように言うことを聞いてくれない。
「……とりあえず、片付いたところだし、谷崎、何か飲む?食欲とかある?」
一息ついて、振り返り、谷崎に声をかけてみると、返事の代わりに規則正しい寝息が返ってきた。
……人が一生懸命片付けてる間に、気持ち良さそうに寝ちゃって。
沸々と怒りが沸き上がってきたが、額や頬に流れる汗や、ほんのりと赤く染まった顔を見ると、その怒りも静かに沈んでいく。
そんなに辛かったのかな。
それなのに、どうしてわざわざ玄関まで私を出迎えたの?
そんな細やかな疑問に少し胸が苦しくなった。
「きっと、あんたのことだから深い意味なんて無いんでしょうね!……わかってるわよ、そんなこと。」
ぼそっと呟いたその言葉は、穏やかな寝息をたてる谷崎には届かなかった。


