「美味しいものを飲めて食べられたら、
それでいいの。」

そう言った私を見て、
ふっと小さく微笑んだ谷崎。

その笑顔があまりに優しいものだったから、
私はまるでなにかに捕まったかのように、
動けなくなった。


「な、なによ。文句ある?」

「いや?お前らしいな、と思って。」

頬杖をつきメニューを眺めながら、
また谷崎は小さく微笑んだ。

…本当によく分からない。
どうしてそんなに楽しそうなのよ。
どれだけ考えても、谷崎の考えてることが
読めない。


「どうした?」

「え、いや…別に。」


じっと谷崎のことを見つめる私の視線に気付いた谷崎が
珍しく少し驚いた顔をして聞いてきた。

…私いつから見てたんだろう。


「なにがいいんだ?」


私がぼーっとしている間に、
谷崎が店員さんを呼んでくれていた。

今日も爽やかないい笑顔だなあ。

「トマトチューハイで。」

「かしこまりました!」

声も出てて元気。
若々しいねえ、うらやましい。
なんておばさん目線で、元気な店員さんを見守る。


谷崎とは正反対。

こんな嫌な男になっちゃだめよ、爽やかくん。


「さっきから見つめすぎ。
そんなに好きなのか?俺のこと。」

店員さんが去ったあと、にやっと笑ってそう言った谷崎。

「み、見つめてなんかないわよ!
睨んでたの!」

「はいはい。」

必死に抗議をしても、いつも通りの嫌な笑顔を浮かべ、
私の言葉をさらりとかわした谷崎。

…本当、むかつく!