「本当にこんなとこでよかったのか?
もっとあっただろ。イタリアンとか。」
「ここがいいの!
イタリアンとか、そんなとこより、
こっちの方が落ち着くし。」
半ば無理矢理、車に乗せられ、
どこに行きたいか、私に聞いた谷崎。
ハンドルを握るその腹が立つほど綺麗な横顔に
少し見とれたことは、
口が裂けても言ってやらない。
自分でどこがいいか聞いたくせに、
答えたとたん、
本当にこんなとこでよかったのか?
なんて。
そりゃあ、女ならもっと、イタリアンが良いとか
レストランとか、そういう可愛いげのあること
言った方がいいんだろうけどさ、
谷崎の前で可愛い子ぶるメリットなんてないし
だったら本当に行きたいとこ言った方がいい。
「だからってお前、居酒屋って…」
はあ、とため息を漏らしながら言う谷崎。
「なによ。私の行きつけに文句言う気?」
私が指定したのは行きつけの居酒屋。
仕事帰りのサラリーマンで賑わう私の憩いの場


