誰も居なくなった保健室。
カタカタと私がキーボードを叩く音が響く。
でも、その音は決して軽快ではない。
「…あーっ、もう!
あんたのせいで全然集中出来ないじゃない!
バカ谷崎!」
私のそんな声が、
谷崎の居なくなった保健室に響く。
…時刻はもうすぐ午後8時になる。
…もうすぐ、谷崎が来る。
谷崎が出ていった後、頭をフル回転させて
考えたけど、結局、奴の考えていることは、
さっぱりわからなかった。
…むかつく。イライラする。
どうしてこんなに頭を占領されなきゃいけないのよ。
よりによって、あんな男に。
「…やめやめ!
これ以上考えたって時間の無駄!」
そうだ、帰ろう!谷崎が来る前に、
帰っちゃえばいいじゃない!
そしたら、谷崎と出掛けなくて済むし、
全部解決!
そうと決まれば早くしなきゃ。
もたもたしてたら、あいつが来る。
私は慌ててパソコンの電源を切り、
帰り支度を始めた。
「なんだよ。まだ準備できてないのかよ。
俺を待たせるなんていい度胸してるな。」
帰り支度を始めた私の耳に
入ってきた低音ボイス。
こんなにも、誰かの声が鬱陶しいと思ったのは
初めてだ。
こんな不快感を感じる声の持ち主は、
あいつしかいない。


