「そんな睨むなよ。
用件があって来たのに、
そんな顔されると言いづらいだろ。」


「用件?」


私が、そう聞いたのと同時に、
谷崎はお得意の怪しげな笑顔を浮かべたまま、
強引に保健室に入ってきた。

…なにが楽しくてそんなに、
にやにや笑ってるんだか。
用があるならさっさと済ませて、帰ってよ!


「で、その用件ってのは何なの。」

イライラする私をよそに谷崎はベッドに腰を下ろし、
尚も微笑みながら口を開いた。


「お前、この後暇か?」

「…は?」

「どうせ暇だろ。
仕事が終わったら、またここに来るから、
それまでに出掛ける準備しとけよ。」


谷崎の言葉を理解できずにいる私を無視して、
谷崎はそう言うと何事もなかったかのように、
保健室を出ていった。


…今、何が起こったの?
“この後暇か”、ってどういう意味?
“仕事が終わったら、またここに来る”?

“出掛ける準備しとけよ”って…


「…私、今、谷崎に誘われた…?」


…嘘でしょ。
ありえない!本当ありえない!
て言うか何!?
“暇だよな。”って!
私だって予定くらい…!


…無いけど!
谷崎と出掛けるなんて、


谷崎、あんた本当になに考えてるの?