「有沢先生とだったら、
誤解されてもいいんだけど。」
「…ふざけたこと言わないで。
私今から作業するから、
もうどっかいって。あんたも次、授業あるんじゃないの?」
未だに、にやにやと嫌な笑みを浮かべている谷崎を睨み、保健室に入った。
…これでやっと、
浮気相手Aにも谷崎にも邪魔されず仕事が
できると思ってたのに、
「な、なにやってんの!
足、邪魔!」
「まあまあ、そんな怒るなよ。
可愛い顔が台無し。」
「怒るわ!そして気持ち悪いこと言わないで!」
これ以上、谷崎の相手をするのはやめようと、
保健室に入り、鍵を閉めようとしたとき、
あろうことか谷崎はその無駄に長い足をドアに
挟んで、扉が閉まるのを阻止してきた。
…なんでこんなに突っかかってくるの!?
からかいたいだけならこんなに話しかけてこなくてもいいでしょ!
「…別に仲が良いわけでもないし、
あんたにとっても私にとってもただの仮の浮気相手でしょ!」
“仮の浮気相手”ってなんか変な日本語だけど、
でも谷崎は浮気された私をからかって、
浮気しようなんて言ってきたんじゃないの?
だったらなんでここまで関わってくるの?
そんなイライラをぶつけるように、
私はまた谷崎を睨んだ。
「そんな怖い顔すんなって。」
谷崎の言う通り、私は今相当怖い顔になってるはず。
なのに、この谷崎という男は笑顔で私の言葉と
睨みをさらりとかわす。
…ほんっと、むかつくやつ!