「何の話してたの?」
笑顔で顔を覗き込むようにして、さっきの会話をさも聞いていないかのようなフリをする。
何も知らない、騙されている馬鹿。
彼は私のことをそういうイメージで今、私に視線を向けているのだろうか。
「お前に関係ねえ」
そういわれるたび、私の本心には気づかれていないんだと安心感を覚えた。まだ、ばれていない。
こうして、私と一緒に下校するのも嫌だろうか。恥ずかしいと思っているのだろうか。
だって私は、学校の“嫌われ者”だから。
見境なく男と遊ぶ女、本原くんに遊ばれている女、学校の教室に来ない女
―――犯罪者の子供
私の父は、今刑務所に入っている。
優しかったはずの父はすべて偽りで、蓋を開ければただの詐欺師だった。人をたくさん陥れて、金に執着する父に私はいつも、そっくりだと言われていた。
このすべての要因が、わたしと本原くんを遠くする。
大好きだった、仲のよかった“幼馴染の本原くん”は、もういない。