「ねえ、俺。別れられないんだけど。どうすれば良いわけ?」
「しらねえよ。さっさと別れればいいじゃねえか。なんだかんだ1年付き合ってるくせに」
「別れ話をする隙がない。ただの嘘告なのに1年間も信じてるのが見てて痛い」
「お前、最低だな」
放課後の教室、楽しそうに聞こえる私の彼氏とその友達の声。
一緒に帰ろう、と下足場で待っていても来る気配がなくて、彼の教室に来てみれば、何度目かの私を馬鹿にしていると断定できる会話。
こんな会話をいまさら聞いたって、なんとも思わない。痛いやつだと思うなら、別にそう思われていたっていい。
このまま、彼を縛っておけるのならば。
手放す気なんてさらさらない。
彼らがいる教室のドアに手をかけ、ドアを開ける。
「本原くん、帰ろうっ」
無理やり、笑顔を作る。もともと私は笑うのが得意じゃない。ましてや、作り笑いなんて本原くんの前以外でなんて絶対しない。
利益のない努力はしない。
「ああ。じゃーな」
短い私への返事と、彼の友達への挨拶。そのときに、私と一切目を合わせないことから、私への後ろめたさが伝わってくる。
いまさら、嘘告だったことなんて知らされたって、私にはどうでもいい。
彼さえ、私のそばにいてくれるのなら。
それだけで、私は幸せだ。