「まだ、生きてる。正しくは、自殺未遂。意識不明の重体だって…っ」
…生き、てる。
そう聞いて死んで詫びろと思っていたはずの俺は、どこが喜んでいた。死んでなくてよかったと、恐ろしく喜んでいた。
一生の運を使い切ったとさえ思ってしまった。
自分がよく分からなかった。
* * *
「長谷川黎は、どこに居ますか」
病院について受付に行き部屋を訊いて、言われた部屋に向かう。
部屋に着くまで母さんも俺も言葉を交わすことはなくて、張り詰めた空気に息が詰まる。
部屋について、ガラス越しに黎を見ると、死んでいるかのように青白く眠っていた。
それを見るとやけに現実味が増してきて、
「…っれ、い」
自分の目が潤んでいくのが分かる。
あれ程死ねばいいと思っていたはずなのに、怖いと思った。
黎が死ぬのが。
黎の目が二度と開くことはないのかもしれないと思うと、言いようのない胸の痛みがはしる。
黎の笑った顔を見たのはいつが最後だろうか。
昨日の無理して作った笑顔を見慣れるようになってしまったのは、いつだろうか。
もう思い出せないくらい前で、それから黎はずっと苦しんでいたのかもしれない。
自分が一番の被害者だと思っていたけれど、何もしていないのにみんなに悪く言われ、助ける場所さえも失っていた彼女こそが一番の被害者だ。

