顔を洗い、リビングへのドアを開くと、母さんが電話をしていた。






「......は...い。そう、ですか。分かりました。今すぐ...行きます」




あまり落ち着いた様子ではない母を不審に思い、



「どこか行くの?」



そう聞けば、今にも泣きそうな顔をして、言いにくそうにこちらを見ている。




その表情は、長谷川の父に騙され裏切られたと分かったときのものと、同じだ。







「あのね......」




その先の言葉を聞いてはいけないと思った。きっと絶対後悔する。自分を許せなくなる。



そんな気がして聞きたくないと思ったけれど、母さんは続ける。


口を開き始めた母さんの唇は震えていて。






「黎ちゃんが......自殺したって...」








知らされた内容に息が詰まる。