私の言葉を聞いた本原くんは、目を大きく開いて驚いていた。





“優”






そう彼の名前を呼んだのは何年ぶりだろうか。



優しすぎる彼にぴったりの良い名前。





もう二度と呼ぶことはないからと、笑顔で言いたくて笑顔をつくって見たけれど、涙が溢れてしまった。




声も震えてしまっていたと思う。





驚いた顔をしたまま突っ立っている本原くんが眩しくて。





そんな彼がずっと好きだった。伝えることはできなかったけれど、好きだ。






彼は綺麗で、私は汚い。



そのことを思い出して、はっと我に返る。






そうだ。




これ以上は名残惜しくなるから、決心が鈍るから、






だめだ。もう、帰ろう。








走って家の中に入った。