泣きながら笑う彼女の表情は、ぐちゃぐちゃでかわいくなんてないし、全然惹かれるものなんてないはずなのに
なんだか俺の心をくすぐって、目が離せなくなった。
その後一緒に話してるうちに
その子は桜の花が好きなんだと言った。
「ねえ、あなたのお名前は?」
その子はすっかりと元気を取り戻して、無邪気な笑顔を浮かべる。
「ゆう、ちゃんって呼ばれてる」
そのとき幼かった俺は、親父や母さんにゆうちゃんと呼ばれていたせいで、
自分のこともゆうちゃんと呼んでいたんだ。
俺が名前を言うと、なにがそんなに嬉しいのかパアッと顔を輝かせた。
そのとき、ドキッと心臓が跳ね上がった感覚。今でも忘れていない。