「お嬢様、ご挨拶を」
笹本に耳打ちされる。
あっそうだよ!
圧巻されて忘れてたけど、私も挨拶しないと!
深呼吸をして、一歩二歩と前に出る。
「お父様、お母様。お久しぶりです」
大きな声ではっきりと。
そしてきっかり90度頭を下げる。
お父様とお母様が近づいてくる足音が聞こえる。
1、2、3秒数えて顔を上げる。
「舞桜、久しぶりだね。元気にしてたか?」
お父様が口を開いたことで、一瞬にしてこの空間が緊迫する。
私も、お父様もお母様もにこやかな笑顔は浮かべない。
ここにいる誰もの表情が冷たい。
「はい、高校の方も順調です。日々、さまざまことを学ばせていただいております」
お父様と視線を合わせて答える。
「それはなによりだ」
5秒間の沈黙。
もうそろそろ、かな?