1秒でも早く桐原くんから離れたい。
走り出すとだんだん息が苦しくなって空気が取り込めない。
肺が、心臓が悲鳴を上げる。
「はあっ……はっ」
スピードを落として立ち止まる。下を向いて拳をぎゅっと握りしめる。
なんで?なんで?なんで?
なんで桐原くんの口からその名前が出てくるの?
私が作った架空人物の、滝桜のこと……に決まってる。
桐原くんは同姓同名の別人をわざわざ私に持ちかけてくる人じゃない。
疑問形だったけど、あれは私に聞いてるんじゃない。
もうすでに確信してる言い方。きっと私の答えなんてどうでもいい。
桐原くんは私が滝桜だってもうわかってるんだ。