『店出るぞ』 ギターを背負い、キャリーバッグに手をかけながら立ち上がった遼の手の甲が、顔の熱を冷まそうとうつむく私の頬に軽く触れる。 『ゆ、で、だ、こ、ちゃん』 切れ長の大きい目が、真っ直ぐに私の目を覗き込む。 『あ!赤くないもん!』 私はさらに顔が熱くなり、両手で顔を隠しながら小走りで店を出た。