「…君が俺に少なからず好意持ってくれてんのは分かってた。
でも高校生が若い教師に憧れる、なんてよくあることだし…俺の気持ちは、君の将来を壊すことになる」
「先生…?」
そんなこと、思ってたの…?
「さっきは嘘って言ったけど、一瞬本気で考えたよ。教師やめようかって。
…でも、やっぱりそれは無理。
君尋常じゃなくドジだし、俺が目離した隙に死なれたら困る」
「…っ」
この前、私は先生の背中から“拒絶”しか感じられなかった。
でも何も分かってなかった。
その拒絶の裏側には…深い愛情があったってこと。
「先生~…!」
思わず駆け寄ってギュッとその広い背中に抱き着くと、先生が前に回した私の手をそっと握ってくれた。
「嘘ついて、とことん突き放して…嫌われようと思ったのに。ダメだな。俺やっぱ意志弱すぎ」
「…バカだな、先生。何されたって、私が先生のこと嫌いになれるはずないじゃん」
先生の、私の手を握る力が強くなる。
「…後悔しない?
君はまだ高校生だし…決して社会的に認められるような関係じゃない。
他のカップルがしてる普通のことが、俺たちは出来ないんだぞ?」
「…いいよ。それで先生がずっと傍にいてくれるのなら、あと一年、絶対我慢する。
だから私が高校卒業したら、他のカップルがしてる普通のこと、いっぱいしよ?」
そう言って先生の背中にグッと額を押し付けた瞬間、クルリと振り向いた先生が、私を正面から力いっぱい抱きしめた。
「…わかった。
じゃぁ守る。俺が君を絶対守るから」