体育館から保健室に繋がる廊下をトボトボ歩く。
そういえば…里中先生と初めて会った時も、こういう風に体育館から保健室までの廊下を一人で歩いていったんだ。
『失礼しまーす、先生怪我しました』
『何、怪我ぁ?そこに座って…ってめっちゃデコから血出てんじゃねーか!』
『いやー、ちょっとドッジボール中に考え事してたらボールが思い切り当たっちゃって…』
『なぜドッジボール中に考え事をするんだ!?しかもどんだけ強く当たったらそこまで擦りむ…く…』
『ちょ、先生ー!?』
…はじめて会った時。
私はまだ高校に入学したての一年生で、先生は大学を卒業したての22歳だった。
額から派手に流血する私を見て、なぜか先生が貧血になっちゃって…。
生徒が先生を血を流しながら看護するという異常事態発生。
今思い出しても、思わず笑っちゃう。
それからもしょっちゅう怪我する私はことあるごとに保健室に行き、先生を怖がらせた。
『また来たのか!
統計は取っていないが君は保健室の利用率ダントツ第一位だな、間違いない』
『そんな統計いいですから、はやく手当てを…』
『やっやめろ血を俺に見せるなぁ~!』
…いつからかな。
いつの間にか、保健室に行くのがちょっと楽しみになってた。
なんだかんだいいながら、先生をからかったり呆れたり、先生に怒られたり。
…すごく居心地のいい場所になってた。
先生は何度も『もうここには来るな!』と言ったけど、私は何度だって行きたかった。
ちょっとだけ着崩した白衣姿が好き。
だけど誰よりも面倒見よく生徒の話を聞いているのが好き。
女子に人気の先生の姿を見るのはちょっとだけ辛い。
だけど笑顔を向けてくれれば、その時だけは、私が先生を独り占めした気分になるの。
…もし、先生が“教師”じゃなくて、私が“生徒”じゃなかったら。
先生も私のことを好きになってくれた可能性は、ほんの少しでも、あったんだろうか。
今と違う未来は、あったのかな。



