「桜の花弁は、ハートの形だから、
"桜散る"って失恋のことなのかな?」
何気なく聞いた私に、彼は答える。
「それは、違うんじゃないか?
桜散るっていうことは……」
-------ジリリリリリリリリリ…
「……はっ!また良いところで…。」
私の名前は、木下はな(きのもとはな)高校一年生。
先日、卒業式を終え、合格発表では、
第一志望に無事合格。
安心したのも束の間、すぐに課題という
悪夢がやってきた。
穏やかな日差しが、差し込む今日この頃は、
春を感じ晴れやかな気分になるはずが…
「…誰だったっけ?」
繰り返し夢にみる彼を、思い出せず、
私は最近目覚めが悪い。
「ハァ…」
思えば、初恋の相手だったような…
……ドンドンドン
このドアの叩き方は…
「よぅ!早く起きろよ、バーカ。」
「…なんで、また海斗が家にいるのよ!」
昔から、少し強めに三回ドアを叩くのは、
幼なじみの日木海斗(ひのきかいと)だ。
「おばさんが、ジャムくれるっていうからよ」
母は、スイーツ作りが大好きなのだ。
「それより、早く起きて、付き合わない?」
突然の海斗からの誘いに、
私は首を傾げた。
というのも、海斗は、女子より、
男子といつも一緒で、
彼女が出来てもマイペースで、
別れてしまうような人で…。
女子を誘う用事なんて…
というか、女子を誘うなんて…
「…悪いものでも食べた?」
「食べてねぇよ!俺の腕なめんな」
そうだった。海斗は料理上手だった。
「ったく、人聞き悪いな!
別に、デートとか、そんなんじゃない
から、安心しろよ。
まぁ、お前を女子と思うやつは、
少ないからな」
…そうか。私は女子としてみられてないのか。一瞬のときめき返せコノヤロウ。
「とにかく、行くぞ!早くしろ!」
…大変な1日が始まった。