「でも、橘さん、教えるの上手だね!先生よりうまい!分かりやすい!」

やっと1年生の文法を教え終わったとき、一木君が言った。

「教科書に書いてあることをそのまま言ってるだけなのですが…」

少しぐったりして言った。

「いやでもすごいよ!僕、いまので全部わかったもん!これで英語バッチリだね!」

「一木君……まだ2年生の範囲あるから…」

そもそも、1年生の範囲は2割しかない。

それを伝えると、

「えっうそ!じゃあなんでこんなにあるの?!
先生ひどい…」

「復習問題でることは1年生のころから先生言っていたので…しょうがないかと…」

「心折れそう…」

一木君の目から、綺麗な涙がポロッと一粒落ちた。よっぽど英語が嫌いなのだろう。

「あ、あの、も、もう少しなので、頑張ろう?」

どうにか元気にさせようと、柄にもなく応援してみた。

すると、潤んだ目でこちらを見てくる。

まずかったかな…?

「橘さんてさ…」