「翔太、おはー」
「おー、宙斗(そらと)か」
間抜けな声で挨拶をしてきた彼は、俺の一番の友人だ。
「相変わらず大変そうだねぇ」
超他人事だな……
そう思っていると宙斗が、そういえば、
と思い出した様に言う。
「今日うちのクラスに転校生がくるらしいよ」
「こんな時に?」
高3で転校なんてあるのか。正直、聞いたことはない。
「んー、確かに珍しいよね。何かよっぽどの理由なんじゃない?」
よっぽどの理由ってなんだよ、ひどい虐めとか?…なんて考えてたら、宙斗がそれを遮る様なことを言う。
「でもその子、女子だって。しかも可愛いって噂だよ」
転校の理由なんてどうでもよくなった。
月9主演のイケメン俳優にも思春期はあるのだ。
転校生で女子でしかも可愛いと聞けば、そりゃ期待する。
理由なんて小さい事を考えてた数秒前の俺は、なんて馬鹿だったんだ、と思う。

ーキーンコーンカーンコーン…
チャイムが鳴って、皆が席に着く。
またいつもと同じ様に、俺の学校生活が始まる。