「あ、はい。」


「いくつかご質問しても宜しいですか?」


「はい。」


「綾香さんを最後に見られたのはいつか覚えてますか?」


綾香は考えるまでも無く質問に答えだした。


「昨日学校が終わって帰りの駅まで一緒でした。乗る電車が同じではないのでそこで別れましたが・・・。確か16:30頃だったと思います。」


「駅はどちらになりますか?」


「細谷駅です」


杉村は手帳にメモをとっている。


「では、綾香さんが昨日一緒に帰っている間に、変わった事などなかったですか?例えば、夜出掛ける用事があるなど。些細な事でも構いません。」


美加は少し考えていたが特に思いつかないらしく「特になかったと思います」と答えた。


「そうですか。お時間取らせてしまい申し訳ありません。何か思いあたる事などあればこちらまでご連絡ください。」


そう杉村は言い、名刺を美加に渡すともう一人の警察官と共に去っていった。


美加が翔達のところに戻ってきたが、あまりに突然の出来事だった為、特に会話も無く裕也とは別れ美加を家まで送った。


といっても、翔の家と美加の家は隣同士だ。


家に着くなり美加が口を開いた。


「翔。少し話せない?」


「あ、あぁ。」


「綾香、どこ行っちゃったんだろ・・」


美加の声が震えている。きっと不安なのだろう。昔から美加は心配性な所があるからなぁ。


「大丈夫だよ。すぐ見つかるさ。」


「そうだよね。私、お母さん亡くなってからどうしても悪い方に考えちゃう癖があるのよね・・」


「わかってる・・・わかってるさ。辛い時は俺に言え。」


美加の目に一筋の涙が零れた。


「明日も学校なんだし今日はもう休め。じゃ、また明日な。」


翔は踵を返し家へと歩きだす。


「翔・・・1つお願いしていい?」


翔は足を止め振り向かずに「なに?」とだけ答えた。


「明日もお昼一緒に食べていい?」


「ばか。当たり前だ。」


それだけ言い、帰宅した。