杉村の目を見ていると、嘘などつけないと思える程全てを見透かす目をしていた。


「はい。」


「もしかしたら以前、別の警察官からの質問と重複する内容もあるかもしれませんがご了承願います。通り魔事件の被害者であるあなたのお父様・・隆さんは、奥様でありあなたのお母様である恵さんに度々暴力をふるっていたのは事実でしょうか?」


「はい。いつも父はお酒が入ると母に対し暴力をふるっていました。」


「お父様を憎んでいましたか?」


憎んでいた・・・だが、ここで憎んでいたと言ってしまっていいものなのだろうか・・・。


しかし、この人を目の前にしてごまかしが通じるとは思えない。


「はい。少なからず憎んでいたと思います。」


「お母様についてはどうですか?」


「母についてといいますと?」


「お母様の事は恨んでいましたか?」


優子は杉村が何を考えているのかがわからなくなってきていた。


この人は事件の日の事を聞きたいのではないのだろうか?


母が父に暴力をふるわれ、それを見ていた私は確かに父を憎くも思った。


事情はどうあれ私を生んでくれた母だ。


至極当たり前の話だと思う。だが、ここまでの話の流れからすれば母が父を憎んでいたか?という質問がくると思っていた優子には想定外だった。


普通この状況なら母親を憎む理由が無い。あるとすれば父親の暴力とは別に何か理由があることになる。


とにかく当たり障りのないように「母を恨む理由がありません」と答えた。