翌朝、またいつものように支度をしていると、メールの受信音がした。
きっと、緑間くんだ。

(おはよう。今日の蟹座と獅子座は普通なのだよ)

彼は約束通り、おは朝の結果を送ってくれた。
私は約束通り、彼のお弁当を詰めた。同じ中身だけど、ちょっと彼の方がご飯が多い。

(おはよう!じゃあ、今日は気にすることなさそうだね!またあとでね)

(あぁ、そうだな。またあとで)

私は長い髪をひとつに結って、前髪を整えた。束ねる前に髪をアイロンで軽く巻き、少しオシャレにしてみた。

校則でシュシュは付けられないから、そこは仕方ない。

お母さんもお父さんも私より先に家を出ている。最後に出る私は、きちんと戸締まりを確認して家を出た。

学校について、緑間くんの教室に向かう。
赤司くんと緑間くんが一緒にいるのが見えた。

「あの、緑間くん呼んでもらえる?」

クラスに入ろうとする男生徒に声をかけ、彼を呼んでもらった。

「おはようなのだよ」

「おはよう!」

私は持ってきたお弁当箱を彼に渡した。
お父さんのものだから、男の人でも恥ずかしくないはず。

「ありがとうなのだよ」

緑間くんは左手で眼鏡を押し上げた。
少し頬が赤い。

「愛情たっぷりだよ」

私は、恥ずかしながらにこにこ笑った。

「うるさいのだよ」

自分で言ってきたくせに、相変わらずすぐ照れるんだから。
くすっと私が笑う。

気付かなかったけど、なんだろう。
周りがすごく見てくる。

「みんなに見られてるから恥ずかしいね。じゃあ、またね!」

私まで恥ずかしくなった。
なんでこんなに見られてるんだろう。
緑間くんってやっぱ密かにモテてるのかな。

「緑間くんって、女子と話すんだ……」

よく耳を傾けると、女生徒が口々に言っていたのはそういう内容だった。
普段、女子と話さない彼が私の持ってきた弁当を受け取っている。
そういうことに驚いていたのかもしれない。

「斉藤さんって緑間くんの彼女?」

そう言われるのも束の間、一瞬にして噂が広がってしまった。