もしも緑間くんと恋をしたら

私は渇くことのないはずだった涙を無理やり止めて、ハンカチで拭った。

「紫原くん、ごめんなさい。私、緑間くんが好きだから追いかける」

「どうして?どうしてみどちんがいいの?」

走ろうとした私の手を掴み、紫原くんはさらに近づいて来た。

「理由なんてない」

「じゃあ、いいじゃん」

「……良くないよ」

困る私を見て黒子くんが、紫原くんの手を掴んだ。

「行かせてあげてください」

「なんで黒ちんが?ひねり潰すよ?」

「また……斉藤さんを泣かせる気ですか?」

「……」

やっと紫原くんが手を離してくれた。
彼は拗ねたように頬をふくらませ、黙りこんでしまった。

「僕は緑間くんは苦手です。でも、斉藤さんは違う。追いかけてあげて下さい。あんなに怒った緑間くんは見たことないです。余程の事だったんだと思います」

黒子くんは冷静にそう言った。
でも不思議と彼の言葉からは、安心感さえ生まれた。
私は、緑間くんを追いかけなくちゃいけない。そう思わされた。

「黒子くん、ありがとう」

そのあと、鞄からメモも取り出し、アドレスを書いて紫原くんに渡した。
彼が携帯を持っているのは、この前から知っていた。

「紫原くん……今日はごめん。続きは二人で話そ?ね?」

「斉ちんがそういうならいいよ」

そうして、私は見失った彼を探すため、その場を後にした。