ポテトチップスを食べながら、紫原くんがやって来て私を呼んだ。

「あ、紫原くん」

フェンス越しに見ていた光景を彼も見て、どういう状況なのか把握したらしい。

「黄瀬ちんと峰ちんと黒ちんもいる……」

「1on1を始めたばっかりだよ。紫原くんもしてきたら?」

「えー、やだよー。汗でベトベトなるじゃーん」

紫原くんは他の子より、そんなにバスケにこだわってるわけじゃないのかな。

青峰くんとかに比べると熱意が感じられない……。
もしかして、練習とかしなくても出来ちゃうタイプなのかな。

「それよりさー、斉ちん」

「ん?」

「なんでみどちんとデートしてるのー?」

紫原くんはポテトチップスを勢い良く食べながら、そう訊いてきた。

「え?なんでって?なんで?」

「すっげぇムカツク……」

(え?!)

紫原くんは不機嫌になって、じーっと私を見つめた。その威圧感に負けた私は、言葉をなくてしまった。

「ねぇ、二人でどっか行こうよ」

紫原くんはポテトチップスを持っていない手で、私の腕を掴んだ。

「……行かないよ……」

チラッと緑間くんの方を見ると、黄瀬くんと一生懸命にバスケをしていた。
彼を置いてどこかに行けるわけない。

「もう、めんどくさいなぁー」

その言葉のあと、私の時間が停止した。

(え?今……え?)

「斉ちんの唇、マシュマロみたい」

私の頬に紫色の髪が当たる。

「黄瀬、ちょっと待て」

緑間くんの声がする。

「おい、紫原何してるのだよ」

すごい勢いでフェンスの扉を開け緑間くんがやってきた。

「何って、キス……」

「隙がありすぎるのだよ、斉藤。俺はもう帰る」

緑間くんが怒って、私が預かっていたはずの衣類を乱暴に掴んだ。

「ま、待って緑間くん!誤解だよ」

追いかけて行くのに精一杯で、後方のことは分からなかった。