バスケットゴールのある広場に着くまで、緑間くんは無言で私のことを見ようともしなかった。
からかわれ過ぎてイライラしたのかもしれない。

「あれ?誰もいないっすね。これじゃ、3on3もできないっすね」

黄瀬くんが残念そうにしている。
三人で来たものの人数が足りないってことかな?

「しゃーねぇー、1on1でもするか?テツ」

青峰くんが仕方がないと、そう提案する。

「やるなら僕じゃないでしょ。黄瀬くんも緑間くんもいますよ」

黒子くんがさらっと返す。

「緑間っち、俺と1on1しないっすか?」

黄瀬くんが緑間くんを誘った。

「負けるわけがないのだよ」

そう言うと、私に脱ぎたてのカーディガンとシャツを渡してきた。

Tシャツ姿になると、緑間くんは黄瀬くんの前に立ち雄々しい雰囲気を放っている。

持たされた緑間くんの衣類からは、彼の匂いが舞い上がり、抱きついたみたいでドキドキした。

フェンス越しに見つめる、緑間くんの姿。
それはいつもと変わらず華麗で優雅だ。

人事を尽くして天命を待つ……か。

努力が自信になり、実力となる。

彼は本当にすごいと思った。

「斉ちんじゃーん」

静かに横に立ったのは、紫原くんだった。