もしも緑間くんと恋をしたら

家に帰ると、居間は電気がついていた。
お母さんが帰ってきているようだ。
扉を挟んでいても香ってくる、カレーの匂い。
今日は、お父さんの大好きなカレーだ。

二階に上がり、再びパソコンを開けた。

時計の針は二十時を回り、時間の流れを教えてくれた。

(緑間くん、アドレス教えてくれてありがとう。斉藤です。今日も部活お疲れ様でした。送信っと……)

私は、パソコンからだけど彼は携帯だ。きっと気付いたらすぐに返事してくれるはず……。

「みちるー?」

そう思っているのも束の間、夕飯ができたとお母さんが呼んでいる。

とりあえず、夕飯を摂ろう。

お父さんとお母さんと私の三人での夕飯。一般家庭からすると、多分少し遅めの夕飯だ。

これも両親が共働きだから、仕方ない。

「みちる、春樹から話を聞いたんだが……春樹が携帯電話を契約してくれるらしいな」

春樹とは叔父さんのこと。
早速、叔父さんはお父さんに説明してくれたらしい……。

「高校生になったらバイトする約束をしたんだけど……」

「お前に寂しい思いをさせているのは父さんも分かっている。素直に父さんに話してくれたらよかったのに」

「ごめんなさい」

「構わないよ。しかし、春樹と本当に仲が良いんだな」

お父さんは意外とあっさり承諾してくれた。
まだ、早いって怒られると思っていたのに。

「うん。今日も麻雀させてくれたの」

「お前も本当好きだな」

お父さんが笑う。
叔父さんと同じく、お父さんだって麻雀が好きだった。
でも、私が覚えるようになってめっきり打たなくなってしまった。

「今日もやったんだって?四暗刻」

「まぁ……」

「なんだ、なんだ女雀士になるつもかー?」

こういう茶化してくるところ、兄弟よく似ている。女雀士になったって、食べていけるか分からないのに。

「やめてよー。女の子なんだから、程よいところへ就職して、いい恋をしていい人と結婚しなさい!」

お母さんはお母さんで、簡単にそういうことを言う。

「と、とりあえず、明日叔父さんと携帯ショップにいく約束したんだけど……」

「春樹に良い機種契約してもらえ!」

お父さんはそう言って、空になったカレー皿をお母さんに渡し、おかわりを頼んでいた。