ようやく帰宅する方向に進んだ。

それぞれが家路を急ぐ。

「あれ……?緑間くんの家もこっち?」

「そうなのだよ」

「あの、私……離れて歩いたほうが良い?」

「……構わないのだよ。だが、楽しい時間にはならないのだよ」

緑間くんはそういって、静かに私の隣を歩いてる。

バスケ以外の時、彼の利き手はテーピングされている。私の右隣りを歩く緑間くんの守られた手が、こちらに向けられていた。

「私、緑間くんのこと誤解してたのかもしれない。ただの冷酷な怖い人だと思ってた」

「な、何を根拠に言っているのだよ」

「だって緑間くん……ちゃんと車道の方を歩いてる。それって緑間くんなりにレディーファーストしてくれてるのでは……?」

そういった後、私は、背の高い彼を見上げた。

眼鏡の隙間から覗く瞳は、どこか温かくて、でも照れくさそうな、そして何とも不器用な口元を連れて私を見下ろしていた。

「分かっているなら口に出さなくてもいいだろう、馬鹿め」

「そうかな?」

ふふっと笑うと彼はまた、黙りこんでしまった。

そんな私の激しい一日が終わろうとしていた。