「十六歳だけど」
 ついっと視線を落とし、コップの中の氷をストローで混ぜた。だっておじさん腹立つし!
 しかし一報のおじちゃんは、俺の心情なんてお構いなしだ。
「あっはっは! あんまり変らねえだろう?」
 何が面白かったのか、おじちゃんは大笑いしている。にやにやと笑った目元には涙が浮かんでいた。
 腹が立つ。非常に腹が立つ。まあ、俺たちの年代が「五十歳も六十歳も変らない」って感覚と同じなんだろうけど……。
 俺は返事もせずに青汁を啜った。おいおいおいとか、拗ねちまうなよとか言う言葉が、耳から入って耳から抜けていく。
 少しして、おじちゃんは観念したように溜息を吐いた。子供扱いされた気がしたけど、おじさんは基本的に良い人なので、聞かなかったことにする。
「まあ、そう怒んな。青汁奢ってやっからさ」
「わ、おじちゃん最高」
 にっこりと顔を上げると、おじちゃんは「機嫌直してくれて有難うよ」と苦笑した。
 何だか自分でも情けない気がするけど、青汁には勝てない。俺は嬉々として、びっと人差し指を突きたてた。
「てことで、もう一杯」
 ずるり。
 おじちゃんは、拭いていた皿を危うく落としそうになる。奢ると言ったのは自分なのに、何を驚く必要があるんだろうか。そう言えば昨日、女将さんも驚いてたような気が……青汁くらいで、夫婦揃って驚き過ぎだよなあ。
「おい、五杯目だぞ?」
「ん? 健康に良いし」
「……まあ、しゃあねえか」
 おじちゃんは力なく独りごちて、渋々といったように青汁を作り始めた。青汁の材料を、手際よく専用の容器に入れていく。
 ちなみに、この食堂のメニューに青汁はない。無理を言って作って貰ってるので、いわゆる裏メニューとやつである。
「ああ、そう言えば」
「そう言えば?」
 容器をしゃばしゃばと振りながら呟いたおじさんに、俺は首を傾げた。噂話を馬鹿にしては、ノリィ・ラックの恥。塵も積もれば何とやら、の精神である。
「実はな、兄ちゃん」
 声がぐっと低くなり、おじちゃんが内緒話のように少しだけ身を乗り出す。
 つられて、俺もおかしくない程度に耳を近づけた。
「また、モンスターが現れたらしい」
「……これまた冗談上手いね、おじちゃん」
 おじちゃんの話に、俺は肩を竦めて笑った。