「えーと……俺は『KANON』と言う宿に泊まっていますので」
「教えて頂き、ありがとうございます。なるべく早く、城の者をそちらに向かわせましょう。
それでは事後処理などがありますので、そろそろ失礼します。今回は、本当にありがとうございました」
女の人は右手を胸に当て、深く頭を下げた。不可侵の、凛とした空気が辺りを包む。
俺は尊敬の念を込め、彼女を見た。こういう人は嫌いじゃない。
そう感じる反面、何故だか嫌な予感がした。何が、と言われても分からないけど……。
城に戻り始めた警備兵を見つつ、そんなことを思った。
◆
モンスター事件から二日経ち、すっかり陽も落ちた頃。俺は「KANON」の食堂で、のんびりと食後の青汁を啜っていた。
「そういやおめえさん、モンスターやっつけたんだってなあ?」
皿を拭いている宿主が、にっと笑った。いつもカウンターの向こうから話しかけてくれる、白髪混じりのおじさんだ。気さくで話しやすい人である。
「ん……まあ、そうだけど」
俺は生返事をしつつ、内心溜息を吐いた。カウンターに座らなきゃ良かったなあ、とも思う。居心地の悪さをひしひしと感じて、俺はストローでコップの中身を混ぜた。
実はこの前のモンスター事件、一種のトラウマなのだ。
なんと、城の奴がモンスターを置いて行ったのである。そのお蔭で、俺は皆さんから熱い視線を向けられた。まあ、倒すだけなら簡単だったけど……血の匂いを嗅いだ仲間が敵討ちに来る可能性があったのだ。ゴブリンの仲間意識が強いとのは有名である。
結局、皆さんからの視線に耐え切れず、止めを刺そうとした時――警備兵が慌てて取りに来たんだけど。
おじさんは人の気持ちも露知らず、感心したようにぼやく。
「しっかし大した玉だなぁ。まだ十四、五だろう?」
ピシリと音を立て、俺は硬直した。いっそ、ヒビさえ入っていそうだ。
そんな俺を訝ったおじちゃんは、首を傾げてひらひらと手を振る。
「おーい? 聞いてっか?」
聞いてますとも。ああ、聞いてますとも。俺の歳が十四か十五だって言ったのを! 一応言うが、れっきとした十六歳である。
俺はしかめっ面をして、おじちゃんを睨む。
「教えて頂き、ありがとうございます。なるべく早く、城の者をそちらに向かわせましょう。
それでは事後処理などがありますので、そろそろ失礼します。今回は、本当にありがとうございました」
女の人は右手を胸に当て、深く頭を下げた。不可侵の、凛とした空気が辺りを包む。
俺は尊敬の念を込め、彼女を見た。こういう人は嫌いじゃない。
そう感じる反面、何故だか嫌な予感がした。何が、と言われても分からないけど……。
城に戻り始めた警備兵を見つつ、そんなことを思った。
◆
モンスター事件から二日経ち、すっかり陽も落ちた頃。俺は「KANON」の食堂で、のんびりと食後の青汁を啜っていた。
「そういやおめえさん、モンスターやっつけたんだってなあ?」
皿を拭いている宿主が、にっと笑った。いつもカウンターの向こうから話しかけてくれる、白髪混じりのおじさんだ。気さくで話しやすい人である。
「ん……まあ、そうだけど」
俺は生返事をしつつ、内心溜息を吐いた。カウンターに座らなきゃ良かったなあ、とも思う。居心地の悪さをひしひしと感じて、俺はストローでコップの中身を混ぜた。
実はこの前のモンスター事件、一種のトラウマなのだ。
なんと、城の奴がモンスターを置いて行ったのである。そのお蔭で、俺は皆さんから熱い視線を向けられた。まあ、倒すだけなら簡単だったけど……血の匂いを嗅いだ仲間が敵討ちに来る可能性があったのだ。ゴブリンの仲間意識が強いとのは有名である。
結局、皆さんからの視線に耐え切れず、止めを刺そうとした時――警備兵が慌てて取りに来たんだけど。
おじさんは人の気持ちも露知らず、感心したようにぼやく。
「しっかし大した玉だなぁ。まだ十四、五だろう?」
ピシリと音を立て、俺は硬直した。いっそ、ヒビさえ入っていそうだ。
そんな俺を訝ったおじちゃんは、首を傾げてひらひらと手を振る。
「おーい? 聞いてっか?」
聞いてますとも。ああ、聞いてますとも。俺の歳が十四か十五だって言ったのを! 一応言うが、れっきとした十六歳である。
俺はしかめっ面をして、おじちゃんを睨む。
